2026年3月19日(木)
歯科に対する想いはデカく、態度もデカいが見た目もデカくなりつつある、そんな岸本知弘が身の引き締まる思いで綴る徒然。今回も最後までお付き合い頂きますよう宜しくお願い致します。
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春野菜がぼちぼち流通するようになってきました。
春キャベツや菜の花は生食でも美味しいですが加熱すれば更に甘味が増して美味しくなります。
この【甘味】ですが、砂糖のような甘味ではありません。
「本当に甘いのか?」と問われれば、今の小学生とかは「甘い」とは言わないかも知れません。
素材そのものの味、それが濃くなると「甘い」と私は表現しますが、砂糖の甘味とは違います。
そもそも「甘味」とは、舌の上など口腔内にある甘味受容体と糖分子が結合した時に「甘い」と脳が感じるように出来ています。甘味受容体には、砂糖だけでなく、アミノ酸の一部や人工甘味料でも結合するので、ひとくちに「甘い」といっても色んな甘さがあるんです。
なので、豊かな人生を送るためには、色んな「甘さ」を感じ取ることが出来るのも大切です。
野菜は加熱により細胞壁が壊れて甘味成分が外に出やすくなり、水分が抜けて味が濃縮されることで、甘味と旨味が大幅に向上します。特に電子レンジや蒸し調理は、旨味成分を外に逃がさず、短時間で甘みを引き出すのに適しています。
さつまいも等のデンプンは熱で酵素が働き、麦芽糖に分解されて甘くなります(70~80℃のじっくり加熱)。
玉ねぎやキャベツは、加熱により辛味(イソチオシアネートなど)が分解され、本来の甘さが引き立ちます。
調理方法によって、ひとつの野菜でも色んな味を出すことが出来ます。甘味も美味しさの要素のひとつですので、砂糖を使わずとも得られる甘さを上手に引き出して食事に取り入れたいですね。
砂糖を主体とした菓子類、それらを口にした瞬間の、あのとろけるような幸福感。
脳内に幸せホルモンがドバドバ出てるのが分かりますよね。
でも、その至福の時間の裏側で、口の中ではミュータンス菌たちが狂喜乱舞してるって考えると…
ちょっと複雑な気分です。甘いものって、まさに「甘い罠」そのもの!
私たち歯科医療従事者は「甘いお菓子を控える」という引き算のアプローチをしがちです。
「自然の甘さを噛みしめる喜びを知る」という足し算のアプローチ、如何ですか?
子供には「よく噛んで食べる野菜はお菓子よりずっと奥深い甘さがある」ことをしってもらう。
大人には「一生、自分の歯で旬の味覚を甘受する幸せ」を再認識してもらう。
甘い罠と、甘噛みの悦びという、この二つの甘さ。そして健康な歯がもたらす「人生の甘み」を、もっと広く、深く伝えていきたいです。
FDI世界歯科連盟は、毎年3月20日を「世界口腔保健デー(World Oral Health Day)」と定め、う蝕や歯周病の予防をはじめ、口腔の健康が全身の健康および生活の質(QOL)に深く関係していることを国際的に啓発しています。
砂糖の過剰摂取はう蝕の原因になりますが、春野菜そのものは過剰摂取したとしてもう蝕の原因にはなりません。とはいえ、なんにしろ過剰摂取は良くないですけどね。
砂糖を使った短絡的な『即効性の甘さ』ではなく、春野菜をじっくり噛んで引き出す『遅い甘さ』こそ、人生の味わい、愉しみです。
この繊細な甘みを感じ取れるのは、健康な味蕾と清潔な口腔環境があってこそなんです。
歯と口の健康、歯と口からの健康。豊かな人生は口元から。