2021年8月12日
歯科に対する想いはデカく、態度もデカいが見た目もデカくなりつつある、そんな岸本知弘が身の引き締まる思いで綴る徒然でございます。
----------
私は子供の歯科治療を行う際、出来る限り本人だけ診療室に入ってもらい、保護者の方には待合室でお待ちいただくようにしています。
年齢や環境、治療内容にもよるとは思いますが、およそ5歳くらいになっていれば、一人で診療台に座り、一通りの歯科治療を済ませ、一人で待合室に戻っていくことが出来ます。
人間の情動は、生まれたときは「快・不快」しか持ち合わせていませんが、次第に怒りや愛情を覚え感じるようになり、5歳くらいで一通りの情緒が完成するといわれています。
つまり、5歳くらいになると大人と同じような情動として感じることが出来ているのですが、それをどう表現するか、というところに幼さが残るというか難しさがあるようです。
5歳といえばまだ自分の意志をどの様に伝えるかの試行錯誤の最中です。語彙力も乏しく、表現方法に限りがあります。それでも、子供なりに表現しようと思えば出来る、はずなのです。
そのあたりを如何に引き出していくかが歯科環境に於いては歯科医療従事者に求められています。
「歯科は痛い」というイメージは遙か昔から定着しているようで、それが皆さんの足を歯科から遠ざけている要因の一つであることは間違いないでしょう。
しかし、歯科治療全てが痛みを伴うわけではありません。
むしろ多くの歯科治療は、その治療内容が早期であるほど痛みは伴いません。
にも関わらず多くの人が「痛いですか?」と聞かれます。本人が一番分かっているはずですね。
むし歯や歯周病は自然治癒することはまずありませんので、放置すればするほど症状はヒドくなり、痛みも伴うようになりますので、早期発見早期治療、予防処置、定期健診が重要なのは言うまでもありません。
医療従事者の中には子どもに「痛くないからね」と言う人がいます。
当院ではそのような説明の仕方は致しません。
実際に痛くなくても、「痛くない」という言葉は「痛い」の否定形として「痛い」を誘発しますので、結局は「痛い」をイメージしてしまいます。
数多ある言葉の中からわざわざネガティブワードをチョイスする必要は無いです。
「頑張ろうね」「強い子だね」などのプラスの言葉をかけてあげる方が頑張れるのは、何も子供だけではないでしょう。
それよりも何よりも、痛みは主観であって、本当に痛いかどうかなんて本人にしか分かりません。
痛みは見えるものでも無く聞こえるものでも無くニオイがあるわけでもありません。
痛みは感じるものなので、感じ方は人それぞれです。
医療従事者側が経験から「これはかなり痛いだろうな」と思っても「そんなに痛くない」と仰る場合もあれば、「これはそんなに痛くないだろう」と思っても「無茶痛い!!」と仰る場合もあります。痛みの尺度を他人が決めてはいけないと私は考えます。
保護者の方がお子さんに「痛くないからね」と仰ることもあります。
ホントですか??痛いか痛くないか分かるのですか??我々の代弁は不要ですし、適当な発言はお子さんとの信頼関係を損ねるだけです。もっと違う言葉のかけ方があります。
子どもなりに痛みに対して真剣に向き合うことが出来るように、私はそのサポートを致します。