岸本知弘

2013.11.08

第5号「やなせたかし氏を偲ぶ」

歯科に対する想いはデカく、態度もデカいが見た目もデカくなりつつある、そんな岸本知 弘が身の引き締まる思いで綴る徒然。

今回も最後までお付き合いいただきますよう宜しくお願い致します。

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平成25年10月13日、偉大な漫画家であり国民的有名人の やなせたかし氏 が天寿を全うさ れました。
私の医院にはアンパンマン関連のグッズが少しばかりあります。
これがまたビックリするくらいの人気で、「アンパンマンがみてるよ」と言うと泣き止む子供、「アンパンマンと一緒にすわる!」と言い張る子供、「わたしはバイキンマンの方が好き」と告白する子供、など、どれだけアンパンマンが心の中に占めてるねん?と思う人気ぶり。
我々は言うなればドラえもん世代で、アンパンマンよりもドラえもんの方が好感度が高かったりしますが、それでもここまでドラえもんLOVE♡ではないでしょう。
(これには、ドラえもんの版権問題や対象年齢など、子供への刷り込みの中で大人の事情も随分と絡んでいることが今回調べている中で分かってきました)
アンパンマンの生みの親である やなせたかし氏について、今更多くを語る必要もないでしょうが、氏はとにかく最期の最期まで仕事をされていたそうです。
氏曰く「仕事を辞めない、のではなく、頼まれるから受けてしまう。人の役に立ちたいし、人を喜ばせたい。人が喜ぶのが一番好き。」とのことで、糸井重里氏との対談では「92歳まではぼちぼち元気で、92歳からダメになった」と語っています。
そんな氏がアンパンマンを生み出したのは1973年のことです。
当時のヒーローといえば、鉄腕アトム、鉄人28号、ウルトラマンや仮面ライダーなどで、あたりじゅうメチャメチャに踏み荒らしても被害者に謝ったりに行ったりしないスーパーヒーローたちに彼は違和感を感じ、「本当の正義とはいったいなんだろう?」と問いかけ、「我々が本当に助けてもらいたいのは、細かいところに気がつく優しいスーパーマンでいてほしい」との思いが芽生えたそうです。(氏は、子供の頃に遠出をして財布を落とし、ひもじく寂しい思いで遠い道のりを歩いて帰ろうと思っていると、友達とその母親に会い、買ってもらったあんパンが体と心に染み渡ったという体験談を語っています。)
また戦争の体験を通じて「正義は或る日突然反転する。正義は信じがたい。逆転しない正義は、献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく、目の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えること。」と考え、これがアンパンマンの原点になっています。
そして「なぜあんパンだったのか?」との問いには「パンは外国、アンは日本のもので、洋服を着ているが 中身は紛れもない日本人と同じだ」と説明しています。
アンパンマンのあんパンを最初にかじったのは、砂漠でお腹をすかせた男の旅人です。アンパンマンの行動は、相手に自分を食べてもらう、という究極の自己犠牲です。助けられる人は弱い立場の善良な人たちだから、このような明らかな自己犠牲にためらいを感じます。そして顔を失うとあんぱんまんは弱ってしまいます。これは「傷つくことなしに正義は行えない」という氏の強いメッセージでもあるのです。
飲食をめぐる関係は大別して「食う・食われる」という攻撃的関係と「食べさせる・食べさせてもらう」という交流的関係の二つに分けられます。
大きな違いは、後者の関係の基盤には、与える者から与えられる者への愛情があることです。
日本には「いただきます」という言葉があります。
これは日本人が食べるという行為を「いただく」行為として表象してきたのです。
これは世界にも類をみない食卓の慣用表現で、フランス語にはボナペティという「召し上がれ」という意味の言葉がありますが、これは招いた側が食べる人に食べる行為を促す為に発せられる言葉で、これから食べる人の言葉ではありません。
また世界の多くの宗教では食事前に神に感謝する祈りがありますが、これは自覚的に神を思い更にその恵みに感謝するという意図的行為です。
これに対し日本人の「いただきます」は、日常で何気無く使われる言葉であり、だからこそより根強く感性の母型として残っているのでしょう。
ちなみにアンパンマンは食べられることはあっても、食べることはありません。
それは単純に(カレーパンマンやしょくぱんまんとは異なり)アンパンマンが食事をする場面が一度も描かれないことにも現れています。
「飲食」が大きなテーマとなった世界で、本来の「食べる」と「食べられる」の食物連鎖的な循環を裁ち切り、自らを食事としてのみ差し出す自己犠牲こそがアンパンマンのヒーロー性を支えているのです!
キャラクタデータバンクの統計によると、2010年、2011年、2012年と3年連続一位を獲得し、アンパンマンは日本で一番商業的な価値が高いキャラクターと位置づけています。
(ちなみに次点はポケットモンスター、ミッキーマウス、ハローキティ、ドラえもんは出て来ません。)
バンダイ「お子様の好きなキャラクター」アンケートでは2012年時点でアンパンマンが11年連続一位です。
1988年10月から2009年3月までの間に番組に登場したキャラクターは1768体で、2009年7月には「最も多くのキャラクターが登場した単独のアニメーション・シリーズ」としてギネスブックに認定されています。
みんなに愛され、その中でも特に0歳から3歳児に熱狂的大人気のアンパンマン。
テーマソングである「アンパンマンのマーチ」は大人をも唸らせる哲学的な歌詞です。

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえ胸の傷が痛んでも
 

何の為に生まれて 何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは嫌だ!

今を生きることで 熱いこころ燃える だから君は行くんだ微笑んで。

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえ胸の傷が痛んでも。

嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!皆の夢守る為


何が君の幸せ 何をして喜ぶ 解らないまま終わる そんなのは嫌だ!

忘れないで夢を 零さないで涙 だから君は飛ぶんだ何処までも

そうだ!恐れないでみんなの為に 愛と勇気だけが友達さ
嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!皆の夢守る為


時は早く過ぎる 光る星は消える だから君は行くんだ微笑んで

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえどんな敵が相手でも

嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!皆の夢守る為

子供達は意味をすぐ理解しなくていい。
口ずさんでるうちに覚えて、大人になった時に「そ ういえはあの歌詞は」って考える機会にでもなれば。
未来を築く子供達にこそ真剣に考えてもらいたい!そういう信念で作詞されました。
やなせたかし氏、享年94歳。
求められるがままに応じ続け、最後には必ず笑っておられました。
アンパンマンだけでなく、私の中には漫画家やなせたかし氏の生き様も随分と参考にさせていただいております。
長い間おつかれさまでした。
そして、ありがとうございま した。
参考文献:詩と批評 ユリイカ8月臨時増刊号「総特集☆やなせたかし アンパンマンの心」

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